江東区散歩 九重橋その2

江東区の九重橋。かつてこのブログにも書いたことがある少し不思議な橋。今回はその続編である。
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 先日、ある情報筋(同僚)から「九重橋の南側の私有堀が埋め立てられたらしい」という衝撃的な情報が寄せられた。10月23日月曜日、早速調査に向かった。
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台風一過の青空と強風の中で目にしたものは、寄せられた情報通り、東京湾につながる運河(私有堀)の穏やかな水面は、キャタピラの跡が縦横無尽に走る泥だらけの土地に変わっていた。埋め立ては九重橋の直下まで。水たまりは台風の大雨でできたのであろうか、仮設の排水ポンプが唸りを上げている。
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 これはいったいどういうことなのか。橋を渡ったところに工事事務所があり、開発計画の看板が掲示されている。それによれば、IHIと佐川急便が建築主となって巨大な物流センターを建設する、とされている。
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この計画は散歩の4日後に発表されていた。

lnews.jp

https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/06d8284305651fe1ec055443b040cf47.pdf

なるほど、大規模な案件だ。

では、九重橋どうなるのだろう。すでに埋め立てられていた橋の北側に続き、今回の埋め立てで橋の南側も埋め立てられて、橋として存在する意味が完全になくなってしまう。開発計画の看板では、橋の南側すぐのところに隣地境界線が描かれており、埋め立てた土地はこの開発主体のものであることと、その近辺には巨大な駐車場ができることが読み取れる。
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そんな四面楚歌状態の九重橋はどうなるのか。昼食時、工事関係者で賑わう「すき家」で食事をしながら、橋を管理する江東区にメールで取材をしたところ、10日後の11月2日に土木部道路課橋梁係から返信をいただいた。

お世話になっております。
江東区橋梁係です。
ご質問いただきました九重橋についてですが、私有堀の埋め立てに伴い、今後開発事業者主体で、江東区と協力のもと撤去する方向で調整しています。
本案件については、回答にも開発事業者との調整が必要であったため、
連絡が遅くなり申し訳ありませんでした。
以上、よろしくお願いします。
江東区土木部道路課橋梁係  ※固有名詞は割愛

 やはり、橋は撤去されるのだ・・。

昼下がり、きらきらしたさざ波の立つ運河にかかるアーチ橋のゆるやかな曲線は、貴重な風景だった。そんな風景が、巨大企業の圧倒的な力に追い詰められていき、やがて滅ぼされる様を、これから目の当たりにするのかと思うと、心が痛む。こんな土地から逃げ出したくなる私は、心が弱いのだろうか。