台風第15号 9/9 通勤記

 今回の台風ではJRをはじめ鉄道各社が「計画運休」 をおこなっていて、JRの場合、9月8日17時の時点で、「9月9日は始発から午前8時頃 まで運転を見合わせる」と発表していた。この発表は「ただし運転開始が遅れる可能性もある」 というエクスキューズはついていたものの、多くの人は、じゃあ午前8 時頃からは多少は遅れはあるかもしれないがフツーに電車は動くんだね、と考えたのではないかと思う。 しかもそれは、いつもの午前8時、 つまりラッシュのピーク時間帯で、 多くの電車が動いている様子をイメージしたのではないか。 もしそうだとすれば、午前8時を過ぎたら、 運転手さんと車掌さんの乗った電車が各駅に忽然と現れるということになってしまう。

 もちろんそんなはずはない。現実は、 日々の初電からラッシュ時までの一連の時間の流れ、 つまり終着駅などで一晩を明かした電車(滞泊) や、車両基地から出てきた(出区)した電車が、 朝、決められた順番に動き始めて、 次第に線路上に存在する電車が増えていって、 やがてラッシュのピークを迎えるという流れがあって、それを経る必要がある。午前8 時頃まで計画的に運転見合わせるということは、運転を始める8時頃は普段の 初電、朝5時前後の状態からスタートするということに近い。さらにそれは、台風の被害が全く無かった場合の話である。

 そんなこともあって、午前中の運転再開は絶望的と考えて呑気に構えていた。当日の予定は午後5時から重要な打合せがあり、最悪それに間に合えば良い。想定通り、朝のニュースでは、鉄道の運行状況を伝えていたが、午前8時を過ぎても多くの路線が運転を見合わせたままだった。 
  午前11時、雲の多いすっきりとしない空から、だんだんと晴れてきた。 強烈な日差しで蒸し暑い。ニュースによれば京急逗子線の運転が始まったようだ。それではそろそろ会社に行くかと、新逗子駅に向かう。

 途中、 JR逗子駅に立ち寄ると、改札口には「東京逗子間は12時頃運転再開」 の掲示あり。それならと横須賀線に乗ることにした。「1番線に停車中の列車はまもなく発車します。この列車は大船行きとなります」とのアナウンス。大船までか。 でももうすぐ東京まで運転再開らしいし、大船に行けばなんとかなるだろう。
 駅の構内のレールを見ると、 逗子駅構内の久里浜方面のレールの表面はうっすら錆びていて、昨夜から列車が走った形跡が無い。
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11時45分、逗子駅を発車。列車はゆっくりと走る。列車の窓は風雨で汚れていて、落ち葉がこびりついている。線路に並行する県道は土砂崩れが発生しているらしく、渋滞している。線路際の背の高い雑草や笹が、強風で線路にはみ出して、車体にバシッバシッと当たり、車内はほのかに草の匂いがする。ミャンマーの鉄道のようだ。名越トンネルをおそるおそる通過するときには、壁面の排水口から雨水が勢いよく流れ出ている。いつもの倍以上の時間をかけて鎌倉到着。江ノ電は動いているのが見えた。12時10分大船に到着。「現在、横須賀線は、大船逗子間のみ運転しております。 横浜東京方面ご利用の方は東海道線根岸線をご利用ください。」 と案内があるが、東海道線根岸線のホームにはほとんど人影がない。おかしいなあと思って階段を上がると驚いた。 各ホームの階段には規制線が張られコンコースは長蛇の列で埋め尽 くされ、自動改札の外には大群衆が待ちかまえていた。 

 JR東日本アプリで列車走行位置を見ると、 大船に一番近い東京方面の列車は、 平塚付近を走行する東海道線だけだった。 横須賀線の再開の見込みは未定。 逗子駅掲示は結果的にはガセネタだった。さすがにこの列に並ぶのは嫌なので、横須賀線ホームに戻った。逗子に折り返すために発車を待っている横須賀線の冷房で涼みながら、東海道線ホームの様子を伺っていると、規制線が解除され大量の人がホームに流入しているのが見えた。 そこにようやくやってきた東海道線。すでに満員状態で、 大船にしばらく停車した後、 大量の積み残しを出して発車していった。次の電車はまだ国府津あたりらしい。呆然としていると発車メロディーが鳴って、列車は逗子に向けて発車した。まあいいか。「電力が足りないため、スピードを落として運転します」との車内アナウンス。そうか、大船・久里浜間には逗子と田浦に変電所があって、そのどちらかは停電しているのだろう。生きている変電所で賄える範囲で運転しているわけか。

 列車はがら空き。すっかり晴れ上がって蒸し暑い山の中を。 夏草をかきわけながらゆっくり走る。ローカル線の旅気分で逗子駅に戻った。横須賀線が大船・ 逗子間で運転している事実は、 駅やネットの運行情報には全く出ていなかった。
 振り出しに戻ってJR逗子駅から京急新逗子駅に歩く。 京急逗子線新逗子金沢八景間で折り返し運転をしていて、混雑しているもののすぐに乗れた。 発車間際にJRの大船運輸区の運転士と車掌が乗ってきた。 さっきの横須賀線に添乗していたらしい。会話から想像するに、 京急で横須賀から久里浜に移動し、 未だ運転を見合わせている久里浜・ 逗子間の運転再開に備えるようだ。
 金沢八景から特急品川行きに乗り換え。品川止まりの特急と普通がそれぞれ10分間隔で運転するというシンプルなダイ ヤで運行されていた。列車は混んでいるが息苦しいほどではない。

 横浜を出ると、例の踏切事故現場にさしかかる。仲木戸から急に減速。 事故現場は徐行で通過するのかなと思ったら、 単に神奈川新町に停車する先行列車がいたためだったようで、 例の踏切はスピードをあげながら通過。事故で折れた架線柱は、交換もされずに丸太と針金で強引に復旧されているのが一瞬見えた 。さすが京急だ。

 その後も快調に走り、品川に到着。JR品川駅は大混雑しており、山手線ホームも満杯。 なんとか潜り混み、新橋着。 会社についたのは15時を回っていた。

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